表紙 法隆寺・観音菩薩立像(百済観音)〈国宝〉

1・2月

西大寺愛染堂 秘仏・愛染明王坐像
鎌倉時代(宝治元年1247善円作) 木造、彩色、截金 像高32.0㎝ (重文)
西大寺は天平宝字8 年(764)称徳天皇の勅願によって創建された平城京の大寺院であったが、平安遷都のあと次第に荒廃。その後文暦2 年(1235)に叡尊が入寺して戒律の道場として復興する。この像は叡尊の発願により仏師善円が造像したもので、愛染とは愛着や親愛の意味を持ち、これは煩悩即菩提、この世に生きることで生まれる心身の煩い(煩悩)を断ち切るのではなく、そのまま悟り(菩提)へと導くとされる密教の仏である。頭上に獅子を戴いた憤怒の形相で日輪を背に全身を赤く染め、三目六臂で手に弓矢・五鈷杵・五鈷鈴などを持つのは、煩悩を越えて悟りの世界へ導こうとする強い意志の表れで、多くの愛染明王像のなかでも、特に優れた名品である。

3・4月

櫻本坊 釈迦如来坐像
飛鳥時代後期 銅造、鍍金 像高17.9 ㎝ (重文)
あたかも奥深い吉野の山中の渓流を想わせるような、伸びやかな衣文の流れに包まれて、穏やかで引き締まった尊顔のこの像は、桜花の名所、吉野金峯山寺塔頭の有力寺院、五台寺櫻本坊に安置されている吉野山中最古の像である。金峯山寺は修験道の開祖、役小角(役行者)によって開かれたが、その時期は飛鳥時代の後期と、ほぼこの像の造像時期に一致する。しかし行者とこの像の関連については不明であるが、金峯山寺の根本伽藍である蔵王堂の本尊、蔵王権現像の本地仏が釈迦如来であることからすれば、或いはこの像が役小角の念持仏であった可能性も考えられ無くもない。だがいずれにしてもこの小像の堂々と安座する風格は、吉野山の謎を秘めて美しい。

5・6月

海龍王寺 十一面観音菩薩立像
鎌倉時代 木造、彩色、截金 像高94.0cm (重文)
平城宮に近い一条大路の北側にあるこの寺は、光明皇后が父藤原不比等の邸宅を寺にしたと伝える古刹であるが、寺域の出土品により、更に古い寺であった可能性もある。平安遷都の後は衰微したが、天平期の遺構としては西金堂と、その堂内に安置の五重小塔(国宝)がある。鎌倉期には復興され、この像はその頃に造像されたもので本堂の本尊として安置されている。古像にしては珍しく金色の彩色が美しいこの像は桧の寄木造で、慈母を想わせる尊顔の優しさが心を引く。左手に持つ水瓶は金泥を施し、これに挿された蓮華の彩色も美しく、下方に伸ばした右の手は、腰に纏った天衣や華麗な瓔珞と調和するなど、美しいリズムを奏でている。尚、この像には室町時代造立説もある。

7・8月

興福寺・阿修羅立像(左側面)
奈良時代 脱活乾漆造、彩色 像高153.0㎝ 〈国宝〉
この阿修羅像は、もと興福寺西金堂の本尊釈迦如来像を取り巻く群像の内、仏教に帰依した古代インドの神々を集めた八部衆像の一体で、三面六臂という異形の姿を、見事に美しく造形した名品として広く知られている。特に各々表情を変えた頭部の三面を、破綻なくまとめあげ、それぞれに個性を持たせた表現の妙には感嘆するほかはない。この左側面は、やや眉をひそめた憂いのある正面の顔に対し、いささか勝気な厳しさを奥に秘めた表情が若々しく美しく、恐らくは釈迦の教えに帰依して、仏道に入る以前の荒々しい阿修羅の本性を物語っているのではなかろうか。これに対し右側面の顔は下唇を軽く噛み、釈迦に帰依する以前の半生に想いを寄せるかに見える。

9・10月

室生寺弥勒堂 釈迦如来坐像
平安時代前期 木造、彩色 像高105.7㎝ 〈国宝〉
室生寺金堂の西南に建つ弥勒堂に安置されているこの像は、いずれかの御堂から移された客仏で、光背や台座は失われ、しばらく雨露に晒されていたためであろうか、頭部の螺髪は無く、彩色も下地の白土を残すのみとなっている。しかし榧の一木から彫出されたこの像は堂々として力強く、体部を覆う着衣部のしなやかで力強い翻波式の衣文は、あたかも奥深い室生の渓谷を走る清流を想わすように清清しくまた力強い。全体の構成は、頭部から体部、そして両脚部へと次第に大きく安定感を増し、これに涼やかな面相が調和するが、頭部から側面にかけての引き締まった造形はことのほか厳しく美しい。力強い平安前期の仏像のなかでも、特に優れた作例であると云えよう。

11・12月

法隆寺百済観音堂 観音菩薩立像(百済観音)
飛鳥時代 木造、彩色 像高209.4 ㎝ 〈国宝〉
しなやかにスラリと伸びた長身でありながら、これほど見事に均整の取れた彫像は他に例がない。そうしたことが異国風に思われて、近年になって百済観音の名で親しまれるようになった、だがこの像は朝鮮半島には自生していない楠の一木造りなので、明らかに我が国で造られた聖観音像である。楠のクスとは超自然的な不思議を意味する奇の意で、神宿る霊木とされているものが多いが、これもそうした信仰の樹を用いたのであろう。しかしこれほど細長い肢体に造形すると何処かに破綻をきたすと思われるのだが、ここではそうした違和感を感じさせず、軽やかな衣文の線や、すらりと伸びた両腕の表現と相まって、独特の親しみのある像となっているのが不思議である。



  • 1・2月
  • 西大寺・愛染明王坐像
    (重文)
  • 3・4月
  • 櫻本坊・釈迦如来坐像
    (重文)
  • 5・6月
  • 海龍王寺・十一面観音菩薩立像
    (重文)
  • 7・8月
  • 興福寺・阿修羅立像
    〈国宝〉
  • 9・10月
  • 室生寺・釈迦如来坐像
    〈国宝〉
  • 11・12月
  • 法隆寺・観音菩薩立像(百済観音)
    〈国宝〉

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