奈良ファン倶楽部 WEB通信『奈良宿手帖』

第2回

フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道 ~ホテルを拠点に新しい旅のスタイルを楽しむ~


2022年3月21日、奈良県天理市に「なら歴史芸術文化村」が開村した。文化財修復の見学をとおして奈良の文化財に触れられる施設をはじめ、文化・芸術に触れることのできる施設だ。敷地内には、ほかに道の駅やレストランもあり、開村当初から多くの人が訪れている。

開村と同日に誕生した宿泊施設が、「フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理⼭の辺の道」だ。「フェアフィールド・バイ・マリオット」は、積水ハウス株式会社とマリオット・インターナショナルが地方創生事業「Trip Base道の駅プロジェクト」として展開している、道の駅を拠点にした宿泊特化型ホテルだ。この「フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道」は15軒目で、5月26日には北海道の恵庭市と長沼町、6月23日には南富良野町で開業し、これからも全国で順次開業が予定されている。

私は開村の数日後に泊まりに行った。「なら歴史芸術文化村」の新しくできた施設や道の駅をじっくり見学したかったし、各地に展開する「道の駅の宿」がどんな宿なのか、すぐに知りたかったからだ。マリオット・インターナショナルといえば、奈良県ではJWマリオットホテルがハイクラスのホテルとして知られている。宿泊特化型だというホテルを体験してみたかったのだ。「フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理⼭の辺の道」は1泊1室14,520円~(最大2名様利用、税金、サービス料込)。JWマリオットホテルの1/3の価格で宿泊が可能だ。

ホテルは天理市にある。奈良盆地の東側の高台、「なら歴史芸術文化村」の麓側に隣接している。


チェックインのときのフロントで、現地での清算関連はすべてキャッシュレス決済だということに少し驚いた。宿泊費だけでなく売店なども、すべてクレジットカードや電子マネー決済のみとなる。事前に自分ができる決済方法を確認しておきたい。なお、宿泊費の清算は予約時に済ませておくこともできる。

フロントから向かって右手には、宿泊者のみが利用できる、広々としていて開放的なロビーがあった。大きなソファが置かれており、ゆったりとくつろげる。ライブラリスペースと呼ばれる空間には、写真を含め、奈良ゆかりの風景や、伝統工芸の写真、伝統工芸など奈良の魅力を伝える物が飾られているほか、奈良に関する本もあった。その地域のことに触れられ、感じられるパブリックスペースがあるのはとても素敵だ。




ロビー奥のスペースはコミュニティカウンターがあり、コーヒーや紅茶、味噌汁などのフリードリンクが用意されているのがうれしい。調理はできないが、電子レンジ、バルミューダのトースター、流し台などを備えているので道の駅で購入した食材を温めたりもできる。



私が宿泊した部屋は4階の西側にあった。フロント担当の方が「晴れていたら二上山に夕日が沈むのも見えるんですよ」と教えてくれた。宿泊した日はあいにくの雨で見ることができなかったが、こういった案内をホテルの人からしてもらえるのはとても嬉しい!旅する側としてはやはり、漏らすことなく、見逃すことなく、その場所をしっかりと味わいたいものだ。そのためにはホテルの方が土地のよさを知っていて、こうして何気なく教えてくれることが大切なのだと常々思っている。

さて、当日、二上山は見えにくかったが、眺望が素晴らしいということは雨でもよくわかった。
後日うかがった話では、高台にあるために、ホテルの1階は、平地の建物の4階くらいの高さに相当するのだそうだ。つまり4階の部屋は7階くらいの高さということになる。なるほど、遠くまでの眺めが抜群なわけだ。


晴れた日の西の部屋からは奈良盆地、そしてその向こうの二上山までが一望できる。夜は、きらびやかな都会の夜景とはまた違った、落ち着いた綺麗な夜景を楽しめる。そしてここからは、奈良盆地で各地で行われるすべての花火が見えるのだそうだ!東側も、古墳や山の辺の道がよく見えるそうだ。今度はそちら側に宿泊してみたい。

ホテルが開業するということは、その場所から見えるものを、地元の人だけではなく、多くの人が知ることができるようになる。新しい発見だった。

「フェアフィールド・バイ・マリオット」もJWマリオットホテルと同様に、調度品やアメニティの質が高い。ダイニングにあるソファや椅子の座り心地が抜群に良い。ベッドはシモンズ社製のもので、ずっと寝そべっていたくなる。ルームウェア、シーツやタオルなどの、肌ざわりも心地よい。これらはマリオット系ホテル全体の品質基準があるそうだ。納得である。このように日常では味わうことのできない心地よさに触れるたび、また泊まりにきたい!と思ってしまうのだ。




「フェアフィールド・バイ・マリオット」は、全国共通で各部屋には浴槽がなく、シャワーのみとなっている。シャワーブースを設けることで、シンプルでゆとりのある空間を実現している。その分、部屋を広くして、くつろげるように設計している。シャワーはレインシャワーで全身でまんべんなくお湯を浴びることができ、体はぽかぽかあったまるので、シャワーでも十分だ。

ちなみに、どうしても大きなお風呂に行きたい場合は、車であれば十数分の所に数か所温浴施設がある。もう少し足を伸ばせば30~40分くらいで宇陀、1時間くらいで曽爾村など、泉質の良い温泉もあるので、チェックイン前に立ち寄るのもいいかもしれない。

もう一つ「フェアフィールド・バイ・マリオット」全ホテルに共通するのが、レストランを併設していないということ。地元の店を利用してもらうのが目的なのだそうだ。

ホテルから地元の店までは車での移動がおすすめ。車以外の交通手段の方は、「なら歴史芸術文化村」併設の道の駅や、レストラン「まるかつ」(テイクアウトができる)で購入しておくのもひとつの案だ。しかし道の駅やまるかつが閉まっている時間だったという場合もあるかもしれない。その時はホテル内に24時間営業の「マーケットプレイス」がある。(キャッシュレス清算のみ)地元特産の食材や地酒はもちろん、カップラーメンやスナック菓子などの軽食も充実している。お酒は購入時にスタッフに開栓してもらう決まりになっているため、お土産としての持ち帰りはできないが、奈良の地酒を飲みながら夜を過ごすという楽しみ方もできる。


シモンズ製の心地よいベッドで快眠。すっきり目覚めたら、朝ごはんはどうしよう?。

ホテルでは、地元の食材をふんだんに詰め込んだ朝食ボックス付きのプランを提供している(要事前予約)。「フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道」の朝食ボックスは、柿の葉寿司や奈良漬、西吉野産の小梅などが丁寧に盛りつけられている。朝7時からフロントで受け取ることができる。


朝食は、「まるかつ」の朝食を食べる手もある。「まるかつ」は奈良市に本店があるとんかつ屋で、天理店のみで朝9時から11時まで朝食を提供している。大振りな器に入った豚汁がメインで、卵が3回までお替りできる。


この他にもコロッケパンやミンチカツパンなど、テイクアウトしやすい手軽なパン類も販売されている。チェックアウトまでの間、部屋でゆっくり食事をするのも良い。連泊するなら「まるかつ」もホテルの朝食ボックスも両方楽しむことができそうだ。

まるかつは20時半まで営業している。メインのとんかつや、天理メニューのヤマトポークと野菜のせいろ蒸しなども美味しい。お弁当も頼める。カフェメニューもあるので、午後の一息つきたい時間にも利用できそうだ。

ホテルに来たら、ぜひ行ってほしいのが「なら歴史芸術文化村」だ。文化財修復の見学ツアーに参加したり、芸術文化体験棟でアートに触れたりと、様々な体験ができる。
とくに文化財修復・展示棟では年5回の企画展示が予定されている。普段なかなか目にすることができない文化財が出展することもあるようだ。今後に注目したい。また、展示以外の様々なイベントも企画されているので、村内各所にある案内板のチェックをしてほしい。

「交流にぎわい棟」にある道の駅では奈良の名物、特産品などは言うまでもなく、人にプレゼントしたいお土産なども多く販売。奈良で育った滋味あふれる野菜なども購入できる。併設の工芸館では、奈良の誇る伝統工芸品も数多く販売されている。南部で工房に直接行かなければ、手に入らなかったような木工製品が一同に介しているのも特徴だ。デザイン性に富んだ木製品の数々は、木製品ファンからの視線も熱い。



「なら歴史芸術文化村」村外の近隣にも立ち寄りたい名所が多くある。立地は古道「山辺の道」からも近い場所にあるので、ホテルから桜井方面に歩いていくこともできる。車での移動であれば5分(徒歩約16分)のところに石上神宮、東には車で3分(徒歩約10分)の場所にはかつての大寺院・内山永久寺跡がある。ここは桜の名所としても知られていて、池の周りに桜が咲く風景が素晴らしい。



また、ホテルのチェックイン時には、公式サイトの周辺情報にアクセスできるQRコード付きのカードがお部屋のキーと一緒に同梱されている。活用すれば、地域ならではのスポットやお店を楽しめる。

自分が泊まった時は特に何も考えずに宿泊を楽しんだ。今回の記事を書くため、後日に支配人・星野さんに取材をさせて頂いたが、ホテルを拠点として連泊をし、近隣府県にも足を延ばして旅している人たちがいることを伺った。なるほど、そうすれば、施設内や周辺の山辺の道近辺のみならず、魅力あふれる中南和のあちこちに足を運ぶことができそうだ。

奈良ファン倶楽部に入会されている、奈良が好きな方なら、ここを拠点として奈良盆地を見渡しながらどう巡るのか、自分で組み立てるのも楽しいだろう。近隣の社寺や旧跡を巡るのもお勧めだが、車があれば南部や東部などにもアクセスしやすい。

また車がないと行きにくいと思われがちだが、6月1日からデマンドバスが運行されることになったそうだ。より一層多くの人がアクセスしやすくなる。

https://www3.pref.nara.jp/bunkamura/secure/1802/bustirasi.pdf

アプリをダウンロードして当日の利用前に予約すれば、天理駅から300円で移動できるようになる(9時~17時の間。他は奈良交通バスが出ている時間帯もある)。車がない方はこちらを利用できる。多くの人に泊まって、それぞれ多様な楽しみ方をしてもらいたい。

ホテル名:フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道
住所:奈良県天理市杣之内町元山口方438-7
駐車場:あり
予約・問い合わせ先:06-6743-4750(9:00~18:00日・祝・年末年始休み)
Webページ: https://fairfield-michinoeki.com

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