たとえば、日本最古のチーズと呼ばれる「蘇」。
1300年続く風景の中でその味を今も楽しむことができます。
さあ、古代をまるごと味わいに、奈良へ遊びに来ませんか。
香久山 奈良県橿原市にある香久山は、標高152.4mの山というより小高い丘の印象ですが、畝傍山、耳成山とともに大和三山と呼ばれています。持統天皇により遷都された藤原京は、大和三山に取り囲まれた場所に位置します。香久山は天上から降りてきたという神話があり、大和三山で最も神聖視された山です。「天の香具山(あまのかぐやま)」とも呼ばれ、万葉集などで歌われてきました。持統天皇は「春過ぎて 夏来たるらし 白たへの 衣干したり 天香具山」と歌い、爽やかな初夏の到来を喜ぶ様子を現しています。
持統天皇持統天皇の父は、大化の改新を実行した中大兄皇子。持統天皇は645年に生誕し、13歳で父の弟である大海人皇子(おおあまのみこ/のちの天武天皇)の元に嫁ぎました。幅広い知識と明晰な頭脳で夫である天武天皇の後を継ぎ、第41代天皇となった持統天皇は、日本の土台をつくった日本古代史上最も優れた女帝と言われています。
阿閇皇女阿閇皇女は持統天皇の異母妹で、義理の娘でもあります。43代天皇(元明天皇)となった後、藤原京から平城京へ遷都を行い、『風土記』編纂の詔勅や、先代から編纂を引き継いで『古事記』を完成させ、和同開珎の鋳造を行うなど大変活躍しました。
激動の時代をかけぬけた女帝たちに想いを馳せながら、いつもと違う奈良旅を楽しんでみませんか。
1300年の歴史を誇る古都・奈良は
それぞれに世界遺産や国宝・重要文化財の 寺社仏閣などが数多く残されており、
日本の始まりを感じることができます。
飛鳥・藤原エリアは奈良盆地南部。
宮殿・都城をはじめ寺院・祭祀空間・庭園・古墳など地下に残された
考古学的な遺跡が密集して存在する他に例のない文化遺産です。
1300年以上前、奈良には日本初の
歴史・文化・食、さまざまなもののルーツがある、 日本はじまりの地。
万葉の歌人も愛でた
古都奈良の桜
飛鳥の香久山や吉野山の桜は全国的に有名です。吉野の桜は、古の天皇から庶民まで広く愛され1300年前からご神木として崇拝されてきた約3万本の桜が咲き誇り、様々な歌集にも歌われてきました。5月は、葛城高原でつつじが見ごろを迎えます。橿原市の「おふさ観音」では春と秋に「バラまつり」、夏は風鈴の涼しい音色が厄払いをしてくれる「風鈴祭り」も開催されます。明日香村の棚田は、四季折々の美しい表情を見せてくれます。日本の原風景を強く残す景色を眺めながら、古の日本に想いを馳せるひとときを。
新年は初代天皇を
お祀りする神宮へ
秋を感じる頃、葛城高原一体は黄金色に輝くススキの大海原となり、眼下に広がる大和盆地と大和三山の眺めも大パノラマで楽しめます。新年の幕開けは、初代天皇とされる神武天皇をお祀りする橿原神宮へ。広々とした境内には清らかな空気に包まれ、参拝すれば清々しい気分に。明日香村では、乙巳の変(大化の改新)の舞台となった飛鳥宮跡や、レトロな町並みを散策するのもおすすめです。
多くの遺跡が残る
飛鳥・藤原
飛鳥宮は、中大兄皇子らが蘇我入鹿を倒し、乙巳の変(大化の改新)の舞台となった場所、そして藤原宮は日本で初めて建設された本格的都城です。現在、藤原宮跡には原野が広がり、季節ごとにコスモスや菜の花など美しい花を楽しむことができます。大極殿跡には基壇が残り、宮跡からは東に天香具山、畝傍山(うねびやま)、北に耳成山(みみなしやま)を望むことができる眺望スポット。飛鳥・藤原の地には飛鳥宮跡、藤原宮跡の他に、飛鳥寺跡、橘寺跡などの寺院跡、さらに石舞台古墳、高松塚古墳などの古墳といった遺跡があります。日本文化と東アジアの先進文化を融合した日本の基礎の地を巡ってみては。
天皇ゆかりの神社で
パワーチャージ
吉野、特に宮滝は、天武天皇・持統天皇の御代から聖なる場所として扱われてきました。天武天皇の即位前「大海人皇子」の頃、甥の大友皇子と皇位を争った「壬申の乱」でも、吉野を拠点として挙兵しています。天武天皇をお祀りする浄見原(きよみはら)神社は吉野川の淵(天皇淵)にあり、古式ゆかしい歌舞奉納「国栖奏(くずそう)」でも知られています。また、日本最古の水神を祀る神武天皇ゆかりの丹生川上(にゅうかわかみ)神社では清らかな水の美しさと神聖な空気に心が洗われます。
日本の食文化
発祥の地
奈良の食文化を語る上で欠かせないのが、古代のチーズ「蘇」。飛鳥・藤原の時代(7世紀末)、香具山の南では飛鳥最古の蘇が作られていたという記録が残されています。牛乳を特殊な方法で煮詰めた「蘇」は当時の貴族に好まれていた高級食品ですが、現代でも「蘇」を再現・アレンジしたお菓子を楽しむことができます。また、そうめん、清酒、まんじゅう、豆腐など日本食に欠かせない食材には奈良にルーツを持つものが多くあります。
古の味を守り、
新しい食文化も発信
奈良の郷土料理といえば柿の葉寿司。海のない地域で貴重な魚を味わうため、昔の人々の知恵と工夫が生んだ伝統ある名物料理です。煮出したお茶に冷ごはんを入れ炊きこんだ茶粥や吉野のくずを使ったお菓子も奈良の食文化を代表します。また、伝統食だけでなく、「かき氷」が奈良の食の新たな文化として認知を広げています。