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清少納言の「推し!」壷阪寺

眼病封じの壷阪寺(南法華寺)

南法華寺

 703年に建立された壷阪寺は大和三山奈良盆地を一望に収める壷阪の山に建つお寺です。
 西国霊場の第六番札所や清少納言ゆかりの寺としても知られ、古くからご本尊は眼の観音様として広く信仰を集める名刹。幾度かの火災に遭うがその度に山僧によって復興されてきたといいます。
 明治の初めに初演された人形浄瑠璃や歌舞伎の「壺阪霊験記」によってもその名は広まり、眼病封じのお寺とも呼ばれてきました。
 ご本尊は、目を開いたふくよかな顔立ちと美しい彩色が残る十一面千手観音様。その一つ一つに目があるといわれる四十二手の腕があり、私たちの苦しみや痛みを和らげてくれるために様々な法具を持たれています。

清少納言が「枕草子」で
寺は壺坂。笠置。法輪。霊山は、・・・
と書いた霊験の寺

現代ならInstagramの「いいね!」

 『春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは・・・』
で始まる文章は、誰もが一度は目にしたことがある、日本初の随筆文学とされる清少納言「枕草子」の第一段です。『随筆的章段』といわれる自然や人事について、清少納言の主観的な意見を綴った内容の一部ですが、ほかにも清少納言が中宮定子のもとに仕えた間に見聞した出来事を、中宮が亡き後に回想的に記した『日記的章段』や、「鳥は・・・」、「うつくしきもの・・・」と、それぞれのテーマに応じて清少納言の感性に触れる物事を列挙し、さらに主観的な解説を加えたいわゆる「物尽くし」と呼ばれる『類聚(るいじゅう)的章段』なものがあります。

 注目すべきは「物尽くし」の中で、「寺は壺坂。笠置。法輪。霊山は、・・・」と、現代的に申しますと「寺は壷坂!」とイチ押し!しています。平安時代から霊験あらたかで人気な様が語られたひとこま。「物尽くし」には、現代人も共感する「あるある!」と頷いてしまう、「いいね!」が付く、「わかる、わかる!」と共感してしまうものが登場します。

清少納言と紫式部

 清少納言は、今年2024年の大河ドラマの主人公・紫式部とともに語られる平安時代の代表的な女流作家です。
前後はしますが共に教育係としてその時の皇后に仕えながら執筆した文学が残っています。この二人は仲が悪かったなどとも伝わりますが、実は、実際には会ったことがなかったとも伝わります。ただ、会うことはなかったがお互い、清少納言は紫式部の亡くなった夫の悪口を、紫式部は清少納言のことを『紫式部日記』に「賢ぶって学才をひけらかす」などと記したものが残っているようで、同じような立場という観点からもライバル的な意識はあったのでしょう。 どちらにしても後世に大きな影響を与え、素晴らしい作品を残した彼女たちの感性は現代にも通じる光るものがあるということには変りありません。

壷阪観音詣をイメージした特製ご朱印登場

特製箔押し切絵朱印

特製箔押し切絵朱印

 平安時代に推しに推された壷阪観音詣。四季折々の切絵の花の下、十二単の女性が詣でる姿がイメージされた華やかな特製箔押し切絵朱印(1部1500円)が昨年末から授与されています。

 壷阪寺は大きな石仏でも有名ですが、その中でも春には桜大仏、夏には新緑大仏、冬には雪大仏が近年脚光を浴びています。特に桜大仏はソメイヨシノに覆い尽くされて、桜雲に浮いているかのような見事な景色が見られ、毎年の夜間参拝もにぎわっています。
 また西国三十三所観音巡礼奈良県札所である長谷寺、岡寺、壷阪寺の三ヶ寺の大和三大観音にて6月前後には「あぢさゐ回廊」、秋には「もみじ廻廊」を開催しており、参拝客を楽しませてくれます。

壷阪寺の基本情報

住所 奈良県高市郡高取町壺阪3
電話 0744-52-2016
拝観時間 8:30~17:00
拝観料(個人) 大人600円 高校生以下100円 幼児無料

※2024年3月から拝観料が改訂されます。
大人800円 小人(高校生以下)200円 幼児無料
駐車場有 普通車500円
【ライトアップ】3月末~4月初め(期間中の点灯時間)18:00~20:00
※桜の開花状況により変更される場合があります。

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