もっと奈良を楽しむ

1895（明治28）年4月の帝国奈良博物館開館の前年、本館（現仏像館）が竣工しました。奈良で最初の本格的西洋建築です。玄関まわりの装飾意匠は見ごたえがあり、入口の「奈良国立博物館　仏像館」の文字は聖武天皇筆の「雑集」（正倉院宝物）から集字したもの。国指定重要文化財。無料観覧日（年度ごとに設定）には通常閉鎖している正面玄関も開放されます。

1902（明治35）年に奈良県物産陳列所（奈良県内の殖産興業と物産の展示販売を行う施設）として開館しました。入母屋造（いりもやづくり）の中央楼から東西に翼部が延びる左右対称の優美な姿は、宇治の平等院鳳凰堂を想起させます。外観は和風基調ですが、随所に西洋建築の技術やイスラム風の意匠もみられる、明治中期を代表する近代和風建築です。
仏教美術資料研究センターは、仏教美術に関連する図書を公開しています（私用は事前予約制）。

奈良女子高等師範学校の本館として、1909（明治42）年に竣工。純真な色合いと気品ある洋館のたたずまいが女子大学のキャンパスに似合います。戦後も大学本部・講堂として使用されていました。名称が「記念館」と改められたのは1990（平成2）年。1994（平成6）年には国の重要文化財に指定されました。春と秋に一般公開され、内部の見学が可能です。

1908（明治41）年に鍋屋巡査派出所として建てられた木造平屋建ての洋風建築。後に奈良警察署鍋屋連絡所となり、「鍋屋の交番」として親しまれました。2004（平成16）年に閉鎖となりますが、改装され、きたまちの観光案内所として活用されています。南北約7.2ｍ、東西約3.6ｍと小ぶりなサイズで、外装の色遣いもメルヘンチックな印象を与えます。

屋根に十字架が立つ純和風建築の教会堂（礼拝堂）。米国聖公会内外伝道局創立100年記念事業として建築された世界5ヵ所の記念教会堂の一つです。奈良吉野の檜56本を含む計560本の木材を使用して、奈良の古社寺修理から得た伝統的な設計施工により、1930（昭和5）年に完成しました。併設する親愛幼稚園舎とともに国の重要文化財に指定されています。

奈良市に水道が創設された1922（大正11）年に建造されました。赤レンガ造りの建屋内に計量器（ベンチュリ―メーター）があり、太さの異なる一本の管に水を流した際に生じる圧力差を利用して、木津川を水源とする浄水場から市街地への送水量を測定していました。公益社団法人土木学会が選奨する土木遺産「奈良市水道関連施設群」のひとつです。

※建物内の見学は、できません。

JR奈良駅東口広場にある旧駅舎。1934（昭和9）年に竣工した同駅2代目の駅舎で、2004（平成16）年のJR高架化に伴い、曳家により移設されました。宝形造の屋根には仏塔にある相輪に似た棟飾が立ち、四隅には風鐸が吊るされています。現在は奈良市総合観光案内所やカフェが入居。内観も気軽に見学できます。近代化産業遺産（経済産業省認定）。

日本を代表するクラシックホテル。東京駅などを手掛けた建築家・辰野金吾氏が本館を設計し、1909（明治42）年に開業しました。皇族、国賓、国内外の著名人らを迎える「関西の迎賓館」として、荘厳と風格を感じさせてくれます。外観は奈良の景観への配慮がうかがえ、内装は赤絨毯の大階段、釣燈籠風シャンデリアなど和洋の魅力が調和しています。
※大規模リニューアル工事のため、2026年1月4日～同年5月下旬（予定）全館休館。2026年6月上旬頃、本館のみ営業再開予定

「小説の神様」と称される志賀直哉が奈良に住んだ13年間のうち、1929（昭和4）年から9年間暮らした邸宅。随筆『奈良』に「兎に角、奈良は美しい所だ。自然が美しく、残っている建築も美しい。」と書いた志賀自身が設計しました。数寄屋風造りでありながら、洋風な様式も取り入れられています。代表作『暗夜行路』はこの自邸で完成しました。

1928（昭和3）年11月、あやめ池遊園地（2004年閉園）の一施設として開館した洋風の木造建物。正面から見ると、左右対称のＬ字型で、内部の中央ホールは塔屋まで吹抜です。外壁の腰壁から基礎にかけての割り肌の石張も印象的。当時欧米で流行していたアール・デコを基調とした内外の意匠を含め、奈良では希少な昭和初期の文化施設として貴重です。

1926（大正15）年、旧六十八銀行の奈良支店として竣工。
1934（昭和9）年に、南都銀行本店となり、その後、2度にわたり増築。
最も古い正面の建築物（旧六十八銀行奈良支店）は、羊の彫刻が施されたイオニア式円柱が特徴的で、奈良県内では貴重な洋風近代建築の事例として、1997（平成9）年に国の登録有形文化財に指定されています。
2025（令和7）年2月に同行の本部機能および本店営業部が奈良市大宮町に移転され、現在は旧本店の利活用について検討されています。