鬼の調伏式 全国から追われてきた鬼を迎え入れ、仏法を説く節分法要で「福は内、鬼も内」と唱える。
知れば知るほど奈良はおもしろい 2016年冬号「古都・奈良へ冬詣で。」
山や森は、古来より日本人にとって神宿る場所。
金峯山寺・蔵王堂で拝顔できる金剛蔵王権現(鎌倉時代)
日本らしい信仰観をベースに生まれた修験道。
修験道は山岳や自然を神の坐す場所として畏れ敬うという日本古来の信仰風土に仏教的行法が加わり成り立った神仏習合の宗教といわれています。吉野山から大峯山山上ケ岳にかけての一帯は、古くから金峯山(きんぷせん)と称する聖域でした。役行者が入山し、修験道の本尊・金剛蔵王権現を感得、その姿を山桜に刻んで祭祀されたのが金峯山寺の開創と伝わります。
金峯山寺のご本尊・金剛蔵王権現は秘仏。普段は拝顔できませんが、11月19日から12月11日まで特別開帳が行われます。また、期間外は鎌倉時代作の木造金剛蔵王権現立像が拝顔できます。凛とした冬、日本の心にふれる聖なる
吉野山へでかけませんか。毎朝の勤行をはじめ、2月3日には金峯山寺独特の節分会・鬼の調伏式が行われます。同日、金峯山寺とその周辺が幻想的な灯りにつつまれる
鬼火の祭典も開催されます。
金峯山寺
(問) 0746-32-8371 (所)吉野郡吉野町吉野山2500 (時)
8:30~16:30(受付は16:00まで) (¥) 500円(特別御開帳の期間は1,000円)(P) なし (交)
近鉄吉野駅からロープウェイ吉野山駅下車、徒歩約10分
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毎朝行われる勤行は、一般の人も参拝できます。
はかなくも華やかな歴史の舞台となった𠮷水神社(よしみずじんじゃ)。
𠮷水神社は、元吉水院(もときっすいいん)と称し、役行者の創立と伝わる吉野修験宗の僧坊でした。明治維新の神仏分離により神社として復興しました。𠮷水神社は、時代ごとに歴史の舞台となってきました。吉野へ行幸された後醍醐天皇を迎え南朝の皇宮となったのも、源義経が静御前や弁慶たちと逃げ延びて潜居したのも、豊臣秀吉が催した盛大な花見の本陣となったのも𠮷水神社と伝わり、はかなくも華やかな歴史の舞台であったことがうかがえます。重要文化財の書院内には様々な宝物等が所狭しと展示されています。吉野に残る悠久の歴史にひととき浸ってみてはいかがでしょう。
𠮷水神社
(問) 0746-32-3024 (所)吉野郡吉野町吉野山579 (時) 9:00~17:00 (¥) 400円
(P) あり(無料) (交) 近鉄吉野駅からロープウェイ吉野山駅下車、徒歩約15分
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南朝の皇居としての気品を残す後醍醐天皇玉座。
吉野山の温泉と食
眺めの良い温泉に、あったか鍋などの郷土料理。
美味しい地酒もお楽しみ。
多くの文人墨客に愛されてきた吉野の雪景色。ため息の出るような美しさを温泉に入りながら眺められる、そんな贅沢な時を過ごせる宿があります。お食事は、もちろん吉野の山の恵みがたっぷり入った鍋料理。天然の猪や吉野葛など郷土の味を堪能しつつ、数ある地酒をお楽しみください。静寂と美景、そして温かで美味しいおもてなしが待っています。
湯元宝の家
吉野山の中千本にあり、客室、露天風呂からの眺めは最高。冬季限定の自家製味噌で仕立てた阿吽鍋が名物。
(問) 0746-32-5121 (交) 近鉄吉野駅からロープウェイ吉野山下車、徒歩約15分
景勝の宿 芳雲館
創業250年の老舗。自然に抱かれた開放感あふれる露天風呂、館内各所からの絶景と味わい深い山里料理が自慢。
(問) 0746-32-3001 (交) 近鉄吉野駅からロープウェイ吉野山下車、徒歩約35分
季節料理 初音
くつろげるお座敷がメインの眺めの良い食事処。冬は鴨や猪の鍋、吉野葛を使った郷土料理が味わえます。
(問) 0746-32-8455(交) 近鉄吉野駅からロープウェイ吉野山下車、徒歩約5分
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五條管長に聴く 奈良にみる日本のアイデンティティ
千年の青、蔵王権現の聖地吉野大峯
吉野大峯と呼ぶ地域は、金峯山といわれて、奈良、平安の時代から大自然の神々が棲まい仏や祖先の坐す聖なる地として、畏怖と畏敬の念を持って仰ぎ拝まれておりました。そして、日本独特といわれる山伏の宗教、修験道の根本道場として、一千年の昔から尊ばれてきた聖地でもあるのです。
奈良県出身の役行者が一千三百年前に金峯山上において、一千日の修行の末に、金剛蔵王権現を祈りだしたのでありますが、そのことが日本中の修験道の始まりであるとされるのです。そして蔵王権現の信仰は日本中に、人々の祈りとして広がり、各地にちりばめられたのであります。
命を懸け修行して救いを求めた方、人々の力や経済をたのみにされた方、山桜に見せられた方など、いにしえの昔より多くの人たちが何かを求めて吉野大峯、金峯山を訪れたのです。そしてその想いの奥底には蔵王権現への信仰と修験道の修行、そしてそこにまつわる人々の祈りと営みがあるのです。
日本一といわれる
吉野山の桜も、蔵王権現の御神木として大切にされ、一本一本心を込めて献木され育てられてきた千年にわたる人々の祈りの木であるのです。だから尊いし日本一といわれるほどの名所になったのであります。この祈りのつながりこそがアイデンティティでありましょう。
蔵王権現の色は青黒。それは魔を伏する慈悲の表れであり、千年つづく人々の祈りを包む青なのです。蔵王堂の日本最大の秘仏蔵王権現の青いお像のその前に座ったとき、温かく包まれることでしょう。
五條 良知 師
ごじょう りょうち
金峯山修験本宗第5代管長/
総本山金峯山寺第 31世管領
おみやげ
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八咫烏 しぼりたて 本醸造(本生)
フレッシュな新酒ならではの華やかな香りと、原酒の持つ芳醇な味わいが楽しめる、やや甘口のお酒。一番しぼり。
720ml 1,080円(税込)
1800ml 2,160円(税込)
(問) 0746-32-2777
(北岡本店)
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吉野雛 桜樹彫り
天武天皇が吉野の離宮にいた頃、地元豪族が桜の樹で人形を制作し献上したのが始まりともいわれる吉野雛。素朴な姿に心もなごむ。
小 3,000円(税込)
※屏風は別売
(問) 0746-32-5889
(太田桜花堂)