奈良ファン倶楽部 WEB通信『奈良COTO絵巻』

誰にも会わない奈良~脱三密!歴史探訪~

空の広さと、知る人ぞ知る隠れた歴史スポットの多さなら奈良におまかせ!
三密にならない奈良の旅に出かけよう!

第3回

お線香とお供え持って Let’s GoToミニ遍路

GoToトラベルキャンペーンさなかの日本列島。しかししかし、遠くには行きたしコロナは怖し、という人も多いのでは?そんな人におススメなのが、本場には行けないけれども行った気になれ、ご利益も得られる“ミニ霊場”。せっかくならこの機会に、ミニ霊場を本気で回ってみませんか? 奈良にはそんな本気に応えてくれる素敵なミニ霊場があるんです。

そもそもこのようなミニ霊場が作られるようになったのは江戸時代のこと。当時、伊勢参りや遍路などを目的とした旅に出かけることは、究極の娯楽でもあった。しかし、金がない。貧しい庶民の夢を叶えたのが、近場でありながら現地を巡拝したのと同じご利益が得られるミニ霊場巡りである。一口にミニ霊場といってもその種類はさまざま。奈良県でもいろいろな形態の霊場が継承されている。例えば、地域のお寺を四国八十八ヶ所霊場や西国三十三所霊場に見立てて巡拝するものや(大和北部八十八ヶ所霊場)、お寺の境内に建立した石仏やお堂をお参りできるよう遍路道が築かれたもの(矢田寺の八十八ヶ所、東大寺二月堂裏手の西国三十三所)、あるいは本場札所からもらい受けた砂を地中に納め、その上を踏みしめて回るお砂踏み(信貴山朝護孫子寺ほか)などもある。

宇陀市の平井大師山には、江戸時代末期の嘉永・安政年間に3年をかけてつくられた四国八十八ヶ所霊場がある。自然の傾斜地をうまく利用した遍路道は変化に富み、春は椿や桜、ミツバツツジ、秋は紅葉が美しい。また標高437mの山頂からは額井岳(大和富士)や伊那佐山を望む。このミニ霊場最大の見どころは、名工・丹波佐吉と弟子たちが彫った100体もの石仏である。第1番札所の3体の像をはじめ、ゆく先々で迎えてくれる弘法大師も佐吉作という。どの石仏も素晴らしいが、石の祠に地蔵を納めた第19番札所の立江寺や、山頂の第45番札所の岩屋寺の不動明王、第87番番外の未完の観音石仏などは、名人の技が随所に光る。

そこで今回おすすめするのが、さくっと回れば1時間のこの霊場を本気で巡ること。準備するものはお茶・線香。手向けの花は野山におまかせして、だんごやおにぎり、お菓子などのお供えも必携だ。各札所の横には、寺院名と特色・ご利益・本尊と真言・ご詠歌・住所が書かれているから、ああ、高知県に入ったねえなどと言いながら、線香とお供えをあげ、真言を唱えてお参りする。お供えはご本尊と一緒にいただき、ゴミは出さないようにしよう。この調子で88ヶ寺をお参りすると所要時間はちょうど4時間。ざざざっと駆け足で回っただけでは得られない旅を終えた達成感を味わえるばかりか、自分のなかに素直な祈りの心が芽生えていることに気づくはず。巡拝後に見る第1番の石仏のお顔もきっと、巡拝前とは違って見えるに違いない。

今回のぼっち旅。出会ったのはお大師さんだけ。密じゃない!

室戸岬の突端にある第24番札所の最御崎寺、本尊虚空蔵菩薩

明るい林の中につくられた遍路道。お堂が点在する

道中はお供えしながら。線香立ても忘れずに

第45番札所、岩屋寺の不動明王。台座には佐吉の花押を刻む

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